自らの蓄えを上手く利用する植物たち 2 | 樹木 | |
樹木は光合成によって作り出した栄養分を,自らの体内に長い間貯 蔵しておくことができる機能を持っています。今回は,その貯蔵養 分がどのように役に立っているかということについてのお話です。 皆さんは様々な目的で「貯金」をしていることでしょう。自分の家を建てるため,学費を払うため,いつ起こるか分からない「万が一」のときに備えるため。貯金はゼロより多少なりともあったほうが精 神的なゆとりもできるかもしれません。 植物にとってもそれは同じことだと考えられます。特に植物は移動することができません。葉っぱを食べる虫の大発生や,冬の寒さ,などの様々なストレスにもじっとその場で耐えなければ生き残って いくことができないのです。 落葉広葉樹の生活サイクルを例にとって考えてみましょう。まず,冬には葉っぱを全て落としてしまうので,春には新しく葉っぱを作らなければなりません。これには,前年,あるいはその前までに光合成によって作り,貯蔵しておいた養分を使います。葉っぱだけでなく枝の生長にもある程度貯蔵養分を使うでしょう。夏になり,この年はたまたま葉っぱを食べてしまう虫が大発生してしまったとします。そうなると,その年は十分な光合成ができなくなってしまいます。この年はそのままやり過ごすか,もう一度新しい葉っぱを作るかしなければ,翌年以降,木の勢力が弱まってしまうかも知れません。また,多くの木は虫に葉っぱを食べられると,葉っぱを堅くしたり,化学物質を出したりして虫を防御する働きも持っているのですが,それにも養分は必要です。 冬になれば,低温に耐えなければなりません。低温に対する耐性のひとつとして,樹液の糖の濃度を高くして水よりも凍りにくくするという性質を持っているのですが,そのためにも光合成で作った糖 分が必要になります。【志水謙祐・嶋田泰也】 |